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ワシントンD.C.でのグローバルローンチイベントのハイライト

作成者: Admin|Jul 23, 2020 10:19:00 AM

ワシントンD.C.でのグローバルローンチイベントのハイライト

7月9日(木)、ワシントンD.C.でのライブバーチャルイベントで、2030年までに2~4剤の新規抗菌薬を患者さんに届けることを目指す画期的なパートナーシップであるAMRアクションファンドが設立されました。

薬剤耐性(AMR)とも呼ばれる抗菌薬耐性感染症の急増に対処するため、新しい抗菌薬が喫緊に必要とされています。20社以上の先進的な研究開発型製薬企業がこの問題に取り組むために立ち上がり、最も耐性の強い細菌や生命を脅かす感染症に対する革新的な新規抗菌薬の研究開発を支援すべく、約10億米ドルの資金を拠出しました。本ファンドは、パイプラインの革新的な候補物質が最も困難な後期開発段階を乗り越えられるよう(資金的支援と技術的支援の両方により)橋渡しし、最終的には持続可能な抗菌薬パイプラインを実現して、私たちの未来を守るために必要な政策改革を行うための時間を政府に提供します。

以下のリンクをクリックすると、フルバージョンのイベント動画を視聴できます。

AMRアクションファンドのコンセプトは、世界保健機関(WHO)、欧州投資銀行(EIB)、及びウェルカム・トラストとともに考案されました。国際製薬団体連合会(IFPMA)が主導し、ローカルや地域の業界団体と共同で行われた、AMRアクションファンドのグローバルローンチイベントは、7月9日にワシントンD.C.とベルリンで同時開催され、さらに7月10日に東京でもイベントが行われました。ワシントンD.C.でのローンチイベントプログラムの詳細については、こちらをご覧ください。

ハイライト

AMRアクションファンドの発足にあたり、ワシントンD.C.のバーチャルイベントでは、イーライリリーのDave Ricks CEO、米メルク(ニュージャージー州ケニルワース)のKen Frazier CEO、ファイザーのAlbert Bourla CEO、米国研究製薬工業協会(PhRMA)のSteve Ubl氏、そしてBIOMichelle McMurray-Heathが登壇しました。イベントの後半では、政策立案者やAMRの重要ステークホルダーがAMRの脅威と新たなイニシアチブの重要性について訴えました。ワシントンD.C.でのローンチイベントには、業界、学界、科学部門、政治部門を代表する総勢16名が参加しました。イベントの冒頭では、NFL選手のBrandon NobleがAMRの患者としての実体験を語りました。AMRアクションファンドの発足が宣言された後、米国HHS保健担当次官補のBrett P. Giroir将校/博士、Bob Casey上院議員(民主党ペンシルベニア州選出)、及びBill Cassidy上院議員(共和党ルイジアナ州選出)が、AMRに対処するために米国政府や議会が行っている取り組みについて語りました。FDA長官で現在アメリカン・エンタープライズ研究所(American Enterprise Institute)に所属するScott Gottleib氏、、米国感染症学会(Infectious Disease Society of America)のHelen Boucher博士、The Pew Charitable TrustsKathy Talkington氏、CARB-XKevin Outterson氏、X-バイオティクス(X-Biotix)のRamani Varanasi氏、及び嚢胞性線維症財団(Cystic Fibrosis Foundation)のMichael Boyleを含む主要なステークホルダーがパネリストとして登壇しました。ワシントンD.C.でのローンチイベントには、全体で約1,000人の視聴者が集まりました。

AMRの脅威、不十分な新規抗菌薬のパイプライン、そして償還制度改革と新たなインセンティブに関する政策措置の喫緊の必要性について、骨太な議論が行われました。スピーカーらは、AMRアクションファンドの設立を歓迎する一方で、同ファンドは抗菌薬パイプラインを強化するための第一歩にすぎず、政策立案者が持続可能な市場の創出に必要な改革を実施するまでの暫定的措置とみなすべきであるとしました。

イベントがバーチャルで開催されたこともあり、AMRとCOVID-19との関連性は誰の目にも明らかなものとなりました。パネリストの多くは、COVID-19のパンデミックへの対応で忙しい中、各自の任務から一時離れて式典に参加しており、AMRに関する懸念を強調すると同時に、ほぼ全員がこれら2つの健康危機の関連性について言及しました。 イーライリリーのDave Ricks  CEOは、次のようにコメントしました。「AMRは、COVID-19の世界的流行がほぼ毎年起きているようなものです」。

AMRは患者さんに重大な影響を及ぼす

AMRアクションファンドの発足に際し、イーライリリーのDave Ricks  CEOは、次のように述べています。「抗菌薬が医療という建物の崩壊を防ぐモルタルのようなものであり、有効な抗菌薬がない状態では、根管治療や癌治療に伴うごく一般的な基本的処置すら適切に機能しなくなる可能性があることを、公衆衛生の専門家や業界の参加者は認識しています」。

AMRが患者さんに及ぼす影響を示す強力な例がいくつか紹介されました。NFL選手のBrandon Nobleは、AMRに関する個人的な体験について、BIOMichelle McMurray-Healthと語り合いました。Noble氏は、「当時、私は人生の中でもベストな状態にありましたが、それまで聞いたこともない、いったい何であるかもわからないものに突然ノックダウンされたのです」と語りました。 同氏はAMRアクションファンドの目的に賛意を表し、行動を起こすよう訴えました。「AMRはなくなりはしません。AMRは常に存在し、細菌は進化し続けるため、私たちは常にその先を行く必要があります。しかし、私たちは細菌に先手を許してしまいました。ですから、私たちは取り組みを続けてその進化に追いつき、追い越していかなければならないのです」。

そのほかにも複数のスピーカーが、病院でAMRに直面した各自の経験について振り返りました:

  • HSSBrett Giroir将校の話:「耐性菌との闘いで生死をさまよう子どもを見ない日は文字通り一日もありませんでした・・・・耐性微生物が私の患者さんの命を、我が国の子どもたちの命を奪っていったのです」。 続けて同氏は、「AMRはこの国に実際に存在する脅威なのです」と訴えました。
  • IDSAHelen Boucherの話:「(この患者さんは)癌に打ち勝って人生を謳歌している時、薬剤耐性感染症によって亡くなってしまいました」。
  • 嚢胞性線維症財団のMichael Boyleの話:「嚢胞性線維症の患者さんの寿命が長くなるにしたがい、これらの感染症に対する治療選択肢が尽きつつあります。医師として、問題の原因となっている感染症の正体を知り、それでもなお患者さんやその家族に有効な治療法がないことを伝えなければならないのはとてもつらいことです」。

AMRアクションファンドの投資家を代表して、米メルク(ニュージャージー州ケニルワース)のKen Frazier  CEOは、次のように述べました。「AMRは世界が直面している最も差し迫った公衆衛生上の危機の1つであると私たちは考えています。対策を取らなければ、長期的に見てCOVID-19を上回る死者数と経済的損失をもたらす可能性があります・・・今回の取り組みは、製薬業界が力を合わせることで、患者さんと社会に大きな変化をもたらすことができるということを示す強力な例です」。

単なる資金提供にとどまらない – 出資製薬企業はバイオテクノロジー企業と連携し、ノウハウも共有

パネリストらは、COVID-19とAMRの類似性を認識し、命を救うために連携することの価値を強調しました。「COVID-19は、非常事態においては連携が重要であることを示しました。単独では、ほかのパートナーと連携した場合ほど効果的に問題に対処することはできません・・・[AMRアクションファンドは]企業グループの集団的貢献と受け止められるべきであり、[AMRという]非常に大きな問題に対処するための措置を講じる上で国会議員などの関係者の模範となるべきです」とファイザーのKen Frazier  CEOは述べました。PhRMASteve Ubl  CEOは、「このファンドは、幅広い研究開発型製薬企業、慈善団体、開発銀行、及び国際組織が参加する極めて協働的な取り組みです」と指摘しました。

患者さんに新規抗菌薬を届けるための支援において、小規模なバイオテクノロジー企業が必要とする資源を業界が提供できるという点でも、業界は極めて重要な役割を果たします。AMRアクションファンドでは、投資の一環として、ポートフォリオ企業に対する技術的支援も行い、大手製薬企業の深い専門知識やリソースにアクセスできるようにすることで、抗菌薬開発を強化・加速させることを目指します。

HHSBrett Giroir将校は、このファンドの設立に感謝の意を表し、次のように語りました。「これは大胆で非常に勇気ある取り組みであり、変革をもたらす可能性があります。しかし、こうした取り組みこそが絶対に必要不可欠なのです。このパートナーシップでは、企業責任の遂行がベストな形でなされていると思います。出資額も目を見張るものがありますが、このパートナーシップが体現している知的コミットメントや知的資源、そしてイノベーションの歴史はお金では買えないものです。米国政府がこうした取り組みを単独で行うことはできません。私たちはもっと多くの取り組みを、これまでとは違った形で行っていく必要があります。この新しいパートナーシップは、その両方を実現していくものと確信しています・・・本日のしかるべき祝典の後は、それぞれ政府や市民団体や業界の一員として、皆さんとともに取り組んでいく心の準備ができていることでしょう」。

頑健で持続可能な新規抗菌薬のパイプラインを確保するためには政策改革が急務

ローンチイベントの参加者らは、AMRアクションファンドを製薬業界による重要な投資として評価する一方で、政策変更やほかのステークホルダーによる取り組みがなければ、せっかくの橋渡しが無になるとの懸念を示しました。 CARB-XKevin Outtersonは、業界の投資について、「償還の仕組みを是正するための時間を確保するための10億米ドルの頭金」と位置付け、「このタイミングでのAMRアクションファンドの設立は、これらの研究開発型企業を倒産の危機から救い、また、こうした研究を前進させ続けることで世界を救うものとなります。ですから、本日、これらのCEO、これらの企業によって示されたリーダーシップに敬意と感謝の意を表すべきだと思います。これらの企業は、この重要なミッションのために10億米ドルもの資金を拠出するよう強制されたわけではありません。それにもかかわらず、今回そうした行動に出られたことに心より感謝したいと思います。しかし、率直に言って、米国政府が抗菌薬の償還の仕組みを変えない限り、本日の興奮は失望に変わり、結果的に破綻するでしょう・・・私たちは今、最悪の事態への分岐点に立っているのです」と述べました。

一部の政策立案者や政府関係者は、AMRが次のパンデミックとなる前に抗菌薬パイプラインを活性化させることがいかに重要かを認識した上で、AMRアクションファンドの設立に伴う楽観的な見方を示し、新規抗菌薬開発に向けたほかの取り組みの失敗の原因となったギャップに本ファンドがどのように対応しているか、すなわち、研究開発から患者アクセスまでゴールインさせる上でどのように役立つかについて語りました。

Bob Casey上院議員民主党ペンシルベニア州選出Bill Cassidy上院議員共和党ルイジアナ州選出は、DISARM法(抗菌薬耐性微生物の革新的戦略の策定に関する法律)を通じて取り組んでいる課題についても言及し、Cassidy議員いわく「安定した抗菌薬市場を創出する」ものとなる同法案の可決に向けて引き続き尽力するとしました。 また、Cassidy議員は、AMRへの対応が急務であることを強調しました。「[このファンドは]将来を見越した取り組みであり、こうした取り組みに乗り出した皆さまに感謝の意を表します・・・次のパンデミックはスーパー耐性菌によるものとなるかもしれず、その時にはきっと今回の取り組みによって命を救われる人が出てくることでしょう」。

最後のパネルディスカッションでは、AMR分野における一流の専門家らが登壇し、AMRのエコシステムにおける課題と変革の機会について重点的に話し合いました。モデレーターを務めたScott Gottliebは、COVID-19による厳しい教訓を強調することからディスカッションを開始しました。「現在、一世代に1度現れるかどうかという病原体と歴史的なパンデミックとの闘いを繰り広げる中で、感染症に対する認識や、危険な病原体に対する治療薬の開発能力に対する考え方が、これまでと大きく変わってきていることは、ほぼ確実と言えるでしょう。今後、感染性病原体に対する抗菌薬の開発能力は、国家安全保障問題とみなされることになると思います」。

パネリストらは、抗菌薬開発に固有の問題に焦点を当てました。 ピュー・チャリタブル・トラスツのKathy Talkingtonは、次のように語りました。「現在のニーズと、いずれ確実に現実のものとなる将来のニーズの両方を満たすには、臨床開発中の抗菌薬の数があまりにも少なすぎます。絶えず進化するという耐性の性質上、耐性を克服するためには、抗菌薬を常に進化させ続け、多様な抗菌薬を利用できるようにする必要があります。つまり、単独でこの問題を解決できる抗菌薬は1つもなく、したがって、このAMRに固有の問題に対処するためには頑健なパイプラインが必要になります。コロナウイルスの来襲は予見できませんでしたが、抗菌薬耐性はその到来が近づきつつあるばかりか、今ここに存在していることがわかっています。したがって、対策を取れなかったという言い訳は通用しません。私たちは、パイプラインを増やすために今すぐ行動を起こす必要があります」。 X-バイオティクスのRamani Varanasiは、抗菌薬に注力するバイオテクノロジー企業が直面する複数の「死の谷」を「この分野の企業をノックダウンする3連続パンチ」と表現し、「マクロ環境が変わらない限り、X-バイオティクスのような企業は成長することも生き残ることもできません」と訴えました。

イベントの締めくくりとして、米メルクニュージャージー州ケニルワースKen Frazierが、次のように語りました。「コロナウイルスは2020年の1月まで未知の存在でしたが、AMRは今存在する脅威であり、何を行わなければならないかははっきりしています。AMRは予測可能な、防ぐことのできる危機であり、この問題を見ないふりをしている余裕はもはやありません。AMRアクションファンドを通じて、業界は・・・崩壊の危機にある脆弱な抗菌薬パイプラインを維持するための対策を進めています。しかし、本ファンドは期間限定の一時的なつなぎに過ぎず、米国を含む主要政府が持続可能な市場の創出に必要な改革を行わなければ効果はありません」。

詳細については、Abigail Jones(a.jones@ifpma.org)又はSilas Holland(silas.holland@amractionfund.com)までお問い合わせください。