Source: Express Pharma
AMRアクションファンドは抗菌薬に注力するバイオテクノロジー企業をどのように支援することを目指しているか
COVID-19による全世界の死者数が60万人を突破したことに注目が集まる一方、年間70万人が抗菌薬耐性(AMR)によって死亡しています。そこで先ごろ、20社以上のバイオ医薬品企業が、2030年までに2~4剤の新規抗菌薬を患者さんに届けることを目指すAMRアクションファンドの設立を発表しました。 この共同取り組みで、どのように有望な抗菌薬の研究開発に携わる小規模なバイオテクノロジー企業を支援していくのか、また、具体的な法改正を求めるロビー活動を行うのではなく、AMRや抗菌薬の研究開発に対する持続可能な投資を支援する必要性についての幅広い議論に参加することでどのように政府を支援していくのかについて、Viveka RoychowdhuryがAMRアクションファンド渉外部門暫定ディレクターのSilas Holland氏に話を聞きます。
抗菌薬の過剰使用を防止する適正使用プログラムに加え、セルフメディケーションによる害に対する患者さんの意識が高まってきたことで、市場が限られてきたことにより、新規抗菌薬に関する研究は資金を確保できなくなっています。実際、この10億米ドルもの新たな投資を行うためにAMRアクションファンドに出資している20社の研究開発型製薬企業のほとんどが、そうした理由で自社の抗菌薬研究プログラムを中止したり、外注に変更したりしています。AMRアクションファンドでは、この問題にどのように対処していく予定ですか?
AMRによる世界的な危機に対処するためには、連携が必要不可欠であることは明らかです。AMRアクションファンドの出資企業には、抗菌薬の研究開発に対する投資を継続している企業(MSD、ファイザー、GSKなど)と、かつてはこの分野で活動していたものの、市場の問題により撤退した企業(リリー、ノバルティスなど)の双方が含まれています。
抗菌薬パイプラインにおける刺激的で革新的な製品の多くは、小規模なバイオテクノロジー企業によって開発が行われています。したがって、AMRアクションファンドではそこに的を絞って投資を行っていきます。しかし、抗菌薬の開発は、膨大な時間と費用がかかる複雑なプロセスであり、採算の取れる新規抗菌薬の市場がないため、そうした小規模企業の多くは、困難な後期開発段階をカバーするのに必要な資金を確保するのに苦戦しています。近年、抗菌薬に注力する多くのバイオテクノロジー企業が、新規抗菌薬の開発に成功したにもかかわらず、採算が取れず持続できないという理由で、破産を申請したり、この分野から撤退したりしています。
製薬業界は、AMRアクションファンドによって、抗菌薬の研究開発を強化・加速させるための資金と専門知識を提供していくことで、これらのバイオテクノロジー企業に対する支援を行っていきます。しかし、持続可能な市場を長期的に確保していくためには、政策立案者も行動を起こし、抗菌薬の研究開発が活発に行われるような環境をつくる市場ベースの改革を法制化していく必要があります。AMRアクションファンドは、業界のステークホルダーと、慈善団体、開発銀行、国際組織などの業界以外のステークホルダーが幅広く結集し、連携することで、抗菌薬パイプラインへの持続可能な投資を可能にする市場環境の創出を政府に促す助けとなると考えています。そうした政策改革は、大手企業の抗菌薬研究開発からの撤退や、抗菌薬に注力するバイオテクノロジー企業の破産につながった、抗菌薬市場の根本的な問題に対処することになります。
AMRアクションファンドは、2030年までに2~4剤の新規抗菌薬を患者さんに届けることを目指しています。2020年第4四半期に運営を開始する見込みということですが、2030年目標に向けてどのようなマイルストーンを設定していますか?また、企業や治験薬の中で、その理念や目標の点から、すでにいくつか投資先候補に挙がっているものはありますか?そして、パートナーの研究開発型製薬企業には、どのような財務的コミットメントが期待されますか?
AMRアクションファンドは、世界中からさまざまな規模の革新的な製薬企業が20社以上結集した、真の業界共同イニシアチブです。各企業は投資水準を自主的に設定し、最大1億米ドルの拠出を約束しています。また、AMRアクションファンドでは、資金提供だけでなく、ポートフォリオ企業に対する技術的支援も行い、大手製薬企業の深い専門知識やリソースにアクセスできるようにすることで、抗菌薬開発を強化・加速させることを目指します。このような「現物」支援は、すでに確保されている現金投資に加えて行われるものとなります。
AMRアクションファンドでは、最も優先度の高い公衆衛生上のニーズ(WHOと米国CDCの優先病原体リストに基づく)に対応した、臨床治療に大きな変化をもたらす、救命につながる新規抗菌薬の開発に注力する小規模なバイオテクノロジー企業に対して、投資を行っていく予定です。当ファンドの投資は、世界レベルの専門家で構成される独立した科学諮問委員会の示す指針に基づいて行われます。投資プロセスに関する詳細な情報については、2020年第4四半期(予定)にファンドの運営が開始されてから発表していきます。
政府と連携を取って、新規抗菌薬の持続可能なパイプラインの確保に取り組んでいくとのことですが、それに関して具体的にどういったことを行っていく可能性があるのか、もう少し詳しくお話しいただけますか?
AMRアクションファンドは、業界のステークホルダーと、慈善団体、開発銀行、国際組織などの業界以外のステークホルダーが幅広く結集し、連携することで、抗菌薬パイプラインへの持続可能な投資を可能にする市場環境の創出を政府に促していきます。AMRファンドは、特定の法改正を求めるロビー活動は行わず、AMRや抗菌薬の研究開発に対する持続可能な投資を支援する必要性についての幅広い議論に参加していきます。
新しいAMRアクションファンドは、新規抗菌薬の研究開発や、持続可能な抗菌薬パイプラインを構築するための対策となる長期的な政策の点で、インドのような国々に対してどのような役割を果たすことを想定していますか?
AMRアクションファンドは、インドを含むあらゆる国のバイオテクノロジー企業を投資の対象とします。例えば、インドを拠点とするバイオテクノロジー企業にAMRアクションファンドの基準を満たす製品があり、科学諮問委員会によって投資が推奨されれば、投資を検討していきます。
新規抗菌薬への適切なアクセスとイノベーションの支援においては、どの国もそれぞれ果たすべき役割があり、万能な解決策というものはありません。AMRアクションファンドが、関連するすべてのステークホルダーと力を合わせ、インドにおける解決策となる適切な長期的政策の決定に取り組むことができれば光栄です。
COVID-19の世界的流行に伴い、医師や罹患している可能性のある患者さんによる抗菌薬の過剰使用/誤用によって、AMRの危険性が高まることが予想されます。今回発足したAMRアクションファンドでは、新たな抗菌薬を開発することが将来の感染症に対処する解決策となるだけではなく、このような弊害が生じる可能性があるという問題にどのように取り組んでいきますか?
AMRアクションファンドは、責任ある使用の問題を真摯に受け止め、投資する新規抗菌薬が適切に使用されるよう尽力していきます。AMRアクションファンドの投資と能力プラットフォームを通じて、企業活動が確実に適正使用目標と合致するようにします。しかし、適切に使用しても細菌は進化し続け、抗菌薬に対する耐性を獲得していきます。この増大する脅威の先を行くためには、継続的なイノベーションと機能的なイノベーションエコシステムが必要です。AMRアクションファンドの焦点は、この問題に対処することであり、長期的なソリューションを支援するためにエコシステム全体で取り組みを行いながら、世界全体の抗菌薬パイプラインの再構築に着手していきます。