出典: IFPMA
世界抗菌薬啓発週間に関する共同声明
世界抗菌薬啓発週間(World Antimicrobial Awareness Week:WAAW)は、薬剤耐性感染症のさらなる出現や拡大を防止するために、世界的な薬剤耐性(AMR)に対する意識を向上し、一般市民、医療従事者、及び政策立案者におけるベストプラクティスを奨励することを目的としています。
国際医療の質学会(International Society for Quality in Health Care:ISQua)、国際病院連盟(International Hospital Federation:IHF)、国際患者団体連合(International Alliance of Patients’ Organizations:IAPO)、及び国際製薬団体連合会(IFPMA)は、3極組織(国連食糧農業機関[FAO]、国際獣疫事務局[OIE]、及びWHO)が合意した2020年のスローガン「抗菌薬の取扱いに注意を(Antimicrobials: handle with care)」と、WAAW 2020のヒューマンヘルス部門のテーマ「抗菌薬を温存するために力を合わせよう(United to preserve antimicrobials)」を支援しています。
ISQua、IHF、IAPO、及びIFPMAは、全世界の人々の安全と医療の質の向上に取り組んでいます。これには、世界的な薬剤耐性(AMR)に対する意識の向上、抗菌薬の適正使用の推進、及び一般的な感染症や希少な感染症の治療に十分な抗菌薬パイプラインをいつでも利用できるようにするために研究開発への投資を促す適切な条件の要求などが含まれます。
「私たちが医療で直面している逼迫した課題の1つは、抗菌薬の不適切な使用です。COVIDの問題に対峙する中でも、抗菌薬の過剰処方が耐性の問題を引き起こしていることを忘れてはなりません。将来、感染症を克服するために必要なものをすべて利用できるようにするため、医療従事者には、継続的改善というしっかりとした基盤に基づく持続可能な抗菌薬の適正使用手順が必要です。 ISQuaは、変化につながる知識を提供すべく行動する中で、抗菌薬の適正使用を医薬品安全性証明書の主要モジュールの1つに含めています」とISQuaのCEOであるPeter Lachman博士は述べています。
IHFのEric de Roodenbeke CEOは、次のように述べています。「抗菌薬耐性は、病気との闘いにおける医療サービスの限界を強調するものです。研究は感染症と闘うための新たな代替薬を見つける助けとなるかもしれませんが、その一方でフードチェーンに対してより適切な対策を取り、抗菌薬を含む廃棄物から環境を守ることも必要です。私たちは岐路に立っており、健康と環境の複合的な課題に対する断固とした行動が求められています」。
「今も抗菌薬が現代医療の画期的な発見であることに変わりはなく、そのことを忘れてはなりません。それと同時に、抗菌薬は先祖から受け継いだものではなく、未来の世代からの借りものであることを改めて認識する必要があります。しかし、今日でも世界の一部地域では抗菌薬の誤用が例外ではなく常態化しています。私たちは患者として、あらゆる面で責任を持って効果的な行動を取る義務があり、今すぐ実行に移す必要があります。そして、すべての患者や一般市民を巻き込み、1人ひとりが薬剤耐性を自分のこととしてとらえるようにする必要があります。より安全な世界の実現は、未来の世代に対する私たちの約束であり、遺産とすべきです」とIAPOのKawaldip Sehmi CEOは述べています。
「既存の抗菌薬に対する耐性発現から社会を守るためには、適正使用に加えて、新製品の頑健なパイプラインを構築することが急務です」と国際製薬団体連合会のThomas Cueni事務局長は述べています。 「私たちは抗菌薬開発が破綻するのを黙って見過ごすわけにはいきません。そこで、研究開発型製薬企業は、バイオテクノロジー企業が2030年までに2~4剤の新規抗菌薬を患者さんに届けることができるよう支援する、10億米ドル規模のAMRアクションファンドを立ち上げました。本ファンドは持続可能な解決策ではありません。そのため、抗菌薬の研究開発に対する持続可能な投資を推進する、新たなプル型インセンティブを含む市場ベースの補償とアクセス改革を法制化するよう政府に要請しています」。
私たちは、ベストプラクティスを現場での具体的な行動にしていくため、これらのメッセージを私たちのネットワークの力で広めていきたいと考えています。
AMRを加速させる要因となっている複雑な社会的、科学的、経済的問題は、民間部門と公共部門がしっかりと協力して取り組まなければ解決することはできません。患者さんを守り、医療システム全体をむしばむ可能性がある公衆衛生上の危機に対処するためには、政府、市民団体、学界、国際的な保健機関、医療提供者、ライフサイエンス業界など、すべてのステークホルダーによる協調的でグローバルな対応が必要です。
国際医療の質学会(ISQua)について
国際医療の質学会(ISQua)は、会員制の非営利団体であり、さまざまなイニシアチブやプログラムの提供を行っています。同学会のミッションは、全世界で健康の向上及び医療の安全性と質の向上を刺激し、推進することです。
会員には、ISQuaのグローバルコミュニティへのアクセス、ウェブサイトの会員専用コンテンツ、学会参加費の割引、International Journal for Quality in Health Careへのアクセス、業界エキスパートへの会員専用アクセスなど多数の特典があります。詳細については、https://isqua.org/をご覧ください。
国際病院連盟(IHF)について
1929年に設立されたIHFは、世界各国の数千の病院を代表する非営利・非政府系の会員制組織です。IHFは、医療の提供、医療サービスの支援、及び教育の提供において、病院や医療機関が果たす重要な役割を認識しています。IHFの役割は、社会の健康向上を第一の目的として、メンバーが知識、戦略、及び経験を交換できるようにすることです。詳細については、www.ihf-fih.orgをご覧ください。
国際患者団体連合(IAPO)について
1999年に設立されたIAPOは、71ヵ国から300の患者団体が参加する独自の国際的な連盟であり、世界中の患者さんが安全で容易にアクセス可能な医療機関を手ごろな費用で受診できるようにすることを目指しています。IAPOは世界保健機関と公式な関係を築いており、すべての患者さんの安全と国民皆保険に向けたコミットメントに貢献しています。詳細については、www.iapo.org.ukをご覧ください。
国際製薬団体連合会(IFPMA)について
IFPMAは、全世界の研究開発型の製薬企業や団体を代表しています。研究開発型の製薬業界では200万人もの従業員が、世界中の患者さんの生活を向上させる医薬品やワクチンの研究、開発、提供にたずさわっています。ジュネーブを拠点とするIFPMAは、国連と公式な関係を築いており、業界の専門知識を提供することで、世界の医療コミュニティがグローバルヘルスを改善する解決策を見つける取り組みに貢献しています。