出典: Global Cause
コロナウイルスの世界的流行により、ワクチンへの注目が一気に高まりましたが、スーパー耐性菌の増加に対する取り組みにおけるワクチンの重要性を忘れてはなりません。
安全で有効なCOVID-19ワクチンが利用可能になるのを待ちわびる中で、ほかの潜在的な健康危機を回避する上で重要な役割を果たす既存のワクチンが多数存在することは忘れられがちです。そうした危機の1つに薬剤耐性があります。
現在、抗菌薬は医療において広く使用されています。抗菌薬は、肺炎の治療に加え、尿路感染症や血流感染症の治療にも使用されます。また、化学療法を受けた後や、親知らずを抜いた後の感染予防にも用いられます。
COVID-19はウイルス性疾患であり、抗菌薬はその直接的な治療には用をなしませんが、COVID-19に伴う細菌性感染症の合併症を治療する際には抗菌薬が不可欠です。
しかし、抗菌薬は成功するほど自らの首を絞める結果になっています。抗菌薬が幅広く使用されることで、細菌の自然な適応プロセスが加速され、より多くの細菌が抗菌薬に対して耐性を獲得しつつあります。
これらのいわゆるスーパー耐性菌は、薬剤耐性(AMR)として知られる問題の結果生じたものです。
現在、AMRによって年間70万人が死亡していると推定されており、さらなる対策を取らなければ、この数字は悪化の一途をたどることになります。
一方、いくつか良いニュースもあり、ここで既存のワクチンの出番となります。ある種のワクチンは、抗菌薬の使用が必要となる可能性のある疾患の予防に役立ちます。その結果、ワクチンの使用や誤用が減り、効果が失われるのを防ぎます。
現在、AMRによって年間70万人が死亡していると推定されており、さらなる対策を取らなければ、この数字は悪化の一途をたどることになります。
例えば、肺炎、耳痛、副鼻腔炎、そしてさらに多くの重篤な感染症を引き起こす肺炎球菌は、肺炎球菌ワクチンによって回避することができます。
世界全体で、年間約1,450万件の肺炎球菌感染症例が発生しています。肺炎球菌ワクチンの接種をさらに拡大することで、5歳未満の小児における抗菌薬の使用を年間1,140万日分回避することができます。
国際社会は、COVID-19に立ち向かうために総力を挙げて取り組む中で、抗菌薬の慎重な使用も考慮する必要があります。
抗菌薬による治療が必要となる又は必要となる可能性のある疾患から人々を守るワクチンの接種の重要性を見失わないようにしなければなりません。
それを怠れば、必ずAMRの増加につながり、私たちの保健システムや現代医療をさらに弱体化させることになります。
Thomas Cueni
国際製薬団体連合会(IFPMA)事務局長、AMR Industry Alliance会長