出典: The Philadelphia Inquirer

新規抗菌薬の市場は根本的に破綻

One of the mysteries of COVID-19 is why it kills some patients while sparing others with similar health profiles.
COVID-19の謎の1つは、健康プロファイルが似通っている患者さんでも、亡くなる人と助かる人がいることです。

もちろん、この謎に対する答えは1つではありません。しかし、権威ある医学雑誌であるThe Lancet誌で発表された研究では、COVID-19で死亡した入院患者の50%が二次性細菌感染症にも罹患していたことが明らかになっています。その一部は、救命を目的とした集中治療室(ICU)の人工呼吸器からこうした感染症に罹患し、死亡していました。

それに対して、COVID-19で入院して助かった患者さんのうち、二次感染が認められたのはわずか1%でした。

すでに病気で体が弱っている人をむしばむ二次性細菌感染症は、既存の抗菌薬に耐性があることが多々あります。薬剤耐性(AMR)によって生じるこうした「スーパー耐性菌」は、すべての人にとって脅威となるものであり、その脅威は増大しつつあります。昨年、国連の委員会が報告したように、「すでに全世界で年間70万人以上が薬剤耐性疾患によって死亡」しています。 新しい、より強力な抗菌薬を開発しなければ、その数は2050年までに年間1,000万人に増加する可能性があります。

科学者らは、こうした暗澹たる未来を十分認識しており、何十年も前から警笛を鳴らしてきました。

抗菌薬は、1940年に初めて一般的に利用できるようになった時、命にかかわる感染症の治療薬として、医療に革命をもたらしました。しかし、それから70年の間に、主に過剰使用と誤用が原因となって、一部の細菌が新たな薬剤耐性株へと進化していきました。要するに、薬剤によって細菌を殺せなかった場合、結果的にその細菌は強くなるということです。

最近、4種類の抗菌薬を販売していた小規模なバイオテクノロジー企業のMelinta Therapeuticsが破産を申請しました。また、有望視されていたAchaogenという別の抗菌薬開発企業も、スーパー耐性菌に対する新規抗菌薬のFDA承認を取得していたにもかかわらず、倒産しています。

新規抗菌薬に対する、このような破綻したインセンティブ構造を是正するには、次の2つの手段を用いることが考えられます。

第一に、最新かつ臨床的に最適な抗菌薬が病院で使用された場合の支払い方法について、政策立案者が対処する必要があります。現在の償還率は、より新しい、より進歩的な抗菌薬を処方すると、医師や病院にとって不利益となり、効果的な罰則となっています。

第二に、リスクをいとわない科学者や投資家が患者さんに新しい抗菌薬を届けられるようにするため、政府やその他のステークホルダーが「市場参入報奨金」のような創造的なインセンティブを検討する必要があります。

こうした考えに基づき、世界20社以上のバイオ医薬品企業により、初期段階の研究取り組みに直接投資する10億米ドルの「AMRアクションファンド(AMR Action Fund)」が発表されました。この新たなファンドは、医薬品候補がイノベーション段階からゴールにたどり着くまでに必要な資金を提供することにより、小規模なバイオテクノロジー企業にとって重要なライフラインを提供します。
これは根本的に破綻した抗菌薬市場を是正するための重要な架け橋となるはずです。

スーパー耐性菌に対抗する新規抗菌薬を開発すること、そして市場の失敗を是正する長期的な対策に力を合わせて取り組むことについて、そろそろ真剣に考える必要があります。さもなければ、スーパー耐性菌による被害は、COVID-19のパンデミックと同レベルか、あるいはそれ以上に破壊的なものとなるでしょう。